シロアリの女王を駆除できないとどうなる?生態・危険性・対応策ガイド 公開日:2026年2月25日/更新日:2026年2月25日 執筆者倉谷 健吾 しろあり防除施工士/気密測定技能者/木造建築物の組立て等作業主任者/一級建物アドバイザー シロアリ対策アドバイザーとして13年の経験を持ち、月に15〜20件ほどの現場調査・施工に携わってきました。これまでで特に印象に残っているのは、重要文化財に指定された建物のシロアリ被害調査です。調査から工事完了まで同行し、無事に役目を終えられたことは、今でも強く心に残っています。 大阪生まれ、長野育ち。プライベートでは、50代半ばからカブトムシを卵から育てることに夢中になっています。 仕事では常に「お客様の目線に立つこと」を大切にし、不安や疑問に寄り添った提案を心がけています。 シロアリ被害が見つかると、「巣の中心にいる女王さえ駆除できれば解決するのでは?」と考える方は少なくありません。 しかし結論から言うと、女王シロアリだけを狙って駆除することは現実的ではありません。女王は巣の最深部に潜み、その居場所を特定すること自体が極めて困難なうえ、仮に女王が弱ったとしても、副女王が代わって繁殖を引き継ぐ仕組みがあるからです。 そのため、シロアリ対策では「女王を探して駆除する」という発想ではなく、巣全体を機能停止させ、再発を防ぐ視点が重要になります。 本記事では、シロアリの女王の生態を正しく理解したうえで、なぜ女王駆除が難しいのか、そして被害を止めるために取るべき現実的な対応策を分かりやすく解説します。 目次 Toggle 女王シロアリの基礎知識:なぜ“女王”が重要なのかシロアリの女王の役割女王が誕生する仕組みシロアリの女王駆除が困難な3つの理由シロアリの女王は見分けられる?発見はほぼ不可能な理由シロアリの女王の外見的特徴女王の居場所と発見の難しさシロアリの女王を駆除しないとどうなる?女王が生き残ると再繁殖する仕組み建物被害のリスク 女王アリを確実に駆除・根絶できるのか?液剤処理・土壌バリアによる再侵入防止ベイト工法による巣ごと駆除信頼できる業者の選び方よくある質問(FAQ)Q1:女王を一匹だけ駆除すれば全滅する?Q2:羽アリを見つけたら女王が近くにいる?Q3:女王を見たことがある人はいる?Q4:再発を防ぐにはどうすればいい?結論|女王を探すより“巣を止める”が正解■ 女王を探す発想は非現実的■ 副女王がいるため単独駆除は無意味■ 工法選択が最重要■ 5年ごとの点検が再発防止の鍵 女王シロアリの基礎知識:なぜ“女王”が重要なのか ※本記事で解説するシロアリの女王は、日本の住宅被害で最も多い「ヤマトシロアリ」を主な対象としています。 日本の木造住宅で発生するシロアリ被害の多くはヤマトシロアリによるもので、女王の居場所や駆除の考え方も、この特性を前提に解説しています。 シロアリの女王の役割 シロアリの女王は、巣を繁栄させ種族を存続させるという極めて重要な役割を担っています。 女王は自ら木材を食害したり巣の外を移動したりすることはほとんどなく、巣の内部に留まりながら繁殖に特化した存在です。 女王は王と協力して繁殖を行い、1日の産卵数は25個程度と言われています。この産卵活動によって職蟻や兵蟻が次々と生まれ、コロニーは時間とともに拡大していきます。女王は約10〜20年という長い寿命を持ち、その間繁殖を続けることで、コロニーの成熟期には数万から数十万規模の組織にまで成長します。 このように女王は、コロニー全体の存続と拡大を支える繁殖の中枢であり、女王が生きている限り、新たな個体が補充され続けます。つまり、女王の存在そのものが、シロアリ被害が長期化する大きな要因となっているのです。 また、コロニーは社会性を持ち、職蟻・兵蟻などの役割が細分化され、統制の取れた組織として機能しています。 女王が誕生する仕組み 長野県は、現在ヤマトシロアリのみ確認されています。そのヤマトシロアリの女王についてお話します。 よくメディアや広告等で「羽アリのシーズン」として発信される時期がありますが、それはヤマトシロアリが4月下旬から5月頃にかけて行われる、年に一度の「群飛(ぐんぴ)」と呼ばれる現象です。 群飛とは、成熟したコロニーから羽を持つ個体(有翅虫)が一斉に飛び立ち、新たな巣を作るために移動する行動を指します。 この群飛の過程で、オスとメスが出会い、翅を落として王と女王となって新しいコロニー(巣)が誕生します。このようにして誕生した女王は、以降その巣の中で産卵を続け、時間をかけてコロニーを拡大させていきます。群飛は新たな女王が誕生する重要な仕組みですが、住宅被害として問題になるのは、すでに定着し成熟した女王が存在するコロニーである点を理解しておくことが重要です。 シロアリの女王駆除が困難な3つの理由 女王シロアリの駆除が困難な理由は、大きく分けて3つあります。 女王の居場所を特定できない シロアリの巣は地中深くや床下の木材内部など、人間が容易に立ち入れない場所に隠されています。女王はその最深部に鎮座しており、外敵や薬剤から厳重に守られています。目に見える被害箇所を叩くだけでは、女王まで薬剤が届かないのが実情です。 副女王による代替繁殖がある もし運良く女王を駆除できたとしても、シロアリにはバックアップ体制が整っています。群れの中には「副女王」と呼ばれる個体が控えており、女王が死ぬと即座に代替女王として産卵を開始します。この強力な繁殖サイクルがあるため、一過性の駆除では群れを完全に絶やすことが困難です。 種類によって巣が分散している 特に「イエシロアリ」などの種類は、1つの巨大な「本巣」だけでなく、周囲に複数の「分巣」を形成します。女王がどこか1つの拠点にとどまっているとは限らず、ネットワーク上に広がった全ての巣を同時に壊滅させない限り、すぐに別の拠点から勢力が回復してしまいます。 シロアリの女王は見分けられる?発見はほぼ不可能な理由 シロアリの女王の外見的特徴 女王の体の大きさは、職蟻が3~6mm程度に対し10~15mm程度あります。 羽アリからの女王なので胸部までは黒いままで腹部は乳白色に分かれています。卵巣が発達しており沢山の卵を産むためイモムシのようなくびれのない肥大化した腹部が特徴的です。 女王の居場所と発見の難しさ ヤマトシロアリの女王は、人の目に触れる場所に姿を現すことはほとんどありません。 女王は地中や床下、建物の構造材内部など、光や振動、乾燥を避けられる環境の深部に留まり、外敵や環境変化から身を守っています。 女王を取り巻く周囲は、職蟻や兵蟻によって厳重に守られており、外部からの侵入や刺激に対して即座に防衛行動が取られます。 特に、日本の住宅被害で多いヤマトシロアリは、イエシロアリと違い特定の場所に巣を作らず、食害しているところを営巣場所として利用する性質があります。そのため、被害が発見された家の柱なのか床下の土台や床組み、あるいは枯れた庭木等と考えられる場所は幾通りにもなり、女王の居場所を特定するのはほぼ不可能です。床下や構造材の調査を行う専門業者であっても、ヤマトシロアリの女王を目視で確認できるケースはほとんどありません。 このような生態から、「女王シロアリを探して駆除する」という発想自体が現実的ではありません。シロアリ対策では女王の居場所を追い求めるのではなく、コロニー全体の活動を止める方法を選択することが、被害を抑えるための正しい考え方となります。 シロアリの女王を駆除しないとどうなる? 女王シロアリを駆除できないまま放置すると、巣は存続し続け、被害は止まりません。 これは「女王を駆除しなかった」のではなく、「女王を駆除できない構造」に原因があります。 女王が生き残ると再繁殖する仕組み シロアリの女王は、10~20年程の寿命がありますが卵を産み続けるので段々と体力も落ち産卵数も減ってくる時が来ます。その時に、コロニー内部では「副女王」と呼ばれる個体が育成されます。副女王とは、女王と同じ遺伝子を持ち、繁殖能力を備えた予備の女王のような存在です。女王の産卵能力が低下した場合や、万が一女王が弱った場合でも、副女王がその役割を引き継ぐことで、巣の繁栄は永続的に続きます。 この仕組みによって、仮に女王が一時的に弱ったとしても、シロアリの巣は簡単には崩壊しません。女王が生き残る、あるいは副女王が存在する限り、繁殖は続き、被害も終息しないのです。 建物被害のリスク 女王シロアリが生き残っている限り、コロニーの繁殖は続き、シロアリ被害は止まりません。職蟻が次々と補充されることで木材の食害は長期化し、被害は徐々に拡大していきます。 特に注意すべきなのは、被害の多くが床下や構造材内部など、目に見えない部分で進行する点です。柱や土台、梁が内部から食害されても気付きにくく、羽アリの発生や木材の空洞化によって、初めて異変に気付くケースも少なくありません。 こうした状態を放置すると、建物の耐久性や耐震性が低下するリスクが高まります。さらに、住環境の悪化や住宅の資産価値低下にもつながります。女王を含むコロニー全体の活動を止めない限り被害は進行するため、早期の対策が重要です。 女王アリを確実に駆除・根絶できるのか? 結論から言うと、女王シロアリを直接駆除することはできません。 しかし、巣全体を弱体化・崩壊させることで、結果的に女王を含むコロニーを機能停止させることは可能です。 液剤処理・土壌バリアによる再侵入防止 薬剤には、即効性と遅効性、忌避性と非忌避性の2種類があります。当社使用の薬剤は遅効性・非忌避です。遅効性・非忌避の薬剤についてバリア工法の解説をします。 液剤処理・土壌バリア工法は、建物へのシロアリ侵入を防ぐことを目的としたシロアリ駆除・予防工法です。床下の土壌や基礎周辺、被害を受けた木部などに液体薬剤を処理し、シロアリが気付かないうちに薬剤に触れ伝播していく仕組みになります。また、活動中の個体に直接作用するため、被害の進行を早期に止める効果も期待できます。 この工法のメリットは、施工後すぐに効果が現れやすく、短期間で被害拡大を防げる点です。 一方で、薬剤の効果は永続的ではなく、一般的に約5年で効果が低下するため、定期的な点検と再処理が必要になります。また、巣そのものを直接崩壊させる工法ではない点には注意が必要です。 ▼こちらの記事もおすすめ 【シロアリ予防・駆除】薬剤散布してシロアリにどう効くの?安全性は大丈夫? ベイト工法による巣ごと駆除 ベイト工法は、管理型のシロアリ駆除工法です。 ステーションという容器を建物外周の地中に設置し待ち伏せる工法や、被害部の蟻道付近に箱型のBOXを設置し直接摂食させる工法があります。いずれも固形の薬剤を用いてシロアリに摂食させ、巣全体に伝播させる駆除工法です。 薬剤の脱皮阻害剤は、職蟻が餌を摂食し巣に持ち帰りグルーミングや分け与える事でシロアリ達は脱皮がうまくできなくなり圧死する仕組みになっています。すると、巣は段々と働き手が減り、餌を分け与えられていたアリたちは徐々に餓死します。 この工法のデメリットは、ケースバイケースで期間が異なり、状況によっては数か月~数年かかる場合があることです。期間中は点検や薬剤の追加を行うため、時間やコストもかかってしまいます。メリットは薬剤散布が心配な方にはお勧めなことです。 信頼できる業者の選び方 シロアリ対策で重要なのは、「女王を駆除する」といった分かりやすい言葉に惑わされないことです。前述のとおり、女王シロアリを直接見つけて駆除することは現実的ではありません。それにもかかわらず、「女王を確実に駆除します」と強調する業者には注意が必要です。シロアリの生態を正しく理解していない、あるいは誤解を招く説明をしている可能性があります。 信頼できる業者かどうかを見極めるには、調査内容が具体的に説明されているかが一つの判断基準になります。床下に入っての目視調査はもちろん、蟻道の有無、被害範囲、木材の状態、湿気や水漏れなど、シロアリが発生しやすい環境条件まで確認しているかをチェックしましょう。 また、工法の選択肢をきちんと説明できるかも重要です。液剤処理・土壌バリアによる再侵入防止と、ベイト工法による巣ごとの弱体化・駆除では、目的や効果、向いているケースが異なります。建物の状況や被害の程度に応じて、それぞれのメリット・デメリットを説明したうえで提案してくれる業者は信頼性が高いといえます。 さらに、シロアリ対策は一度の工事で終わりではありません。薬剤の効果は永続的ではないため、定期点検の有無や、一般的に目安とされる5年後の再処理・再点検について説明があるかも確認しておくことが大切です。長期的な視点で建物を守る姿勢があるかどうかが、業者選びの大きなポイントになります。 ▼こちらの記事もおすすめ 【9つのポイントで解説】安心して任せられるシロアリ駆除業者の選び方 よくある質問(FAQ) Q1:女王を一匹だけ駆除すれば全滅する? 女王シロアリを一匹だけ狙って駆除することは現実的ではありません。 仮に女王をピンポイントで駆除できたとしても、次に女王となる副女王が成り代わる為全滅はさせられません。全体的な、駆除が必要になります。 Q2:羽アリを見つけたら女王が近くにいる? ヤマトシロアリは食害した部分を営巣しており、どこに女王がいるか判断が付きません。 羽アリたちは群飛する際、兵蟻の護衛の下旅立ちます。そんな危険な群飛の近くに女王がいる可能性は極めて低いと言えます。 Q3:女王を見たことがある人はいる? この業界に、13年ほど携わり何百件というお宅を調査させて頂きましたが、一度も女王を見た経験がありません。見た事のある方もいらっしゃると思いますが、その方たちはとても希少な経験をされたと思います。それ程、女王はレアな存在になります。 Q4:再発を防ぐにはどうすればいい? まずは慌てずに専門の方に相談し、症状に遭った対処方法を行った上で、シロアリの予防工事を継続することが最善です。 専門業者で駆除工事を行ったから大丈夫とも言えません。シロアリの薬剤は人体や環境になるべく影響を与えないように作られています。その為、薬剤成分は約5年で自然分解され薬剤効果はほぼ消失します。ですので、5年ごとに点検と再度薬剤の処方が必要です。 結論|女王を探すより“巣を止める”が正解 ここまで解説してきた通り、シロアリ対策で本当に重要なのは「女王を見つけること」ではありません。大切なのは、巣(コロニー)全体の活動を止め、再発しない状態をつくることです。 ■ 女王を探す発想は非現実的 女王シロアリは地中や床下、構造材内部など、人の目に触れない場所に潜んでいます。特に日本の住宅被害で多いヤマトシロアリは、特定の“本巣”を持たず、食害箇所そのものを営巣場所とする性質があります。 そのため、被害が見つかった場所=女王の居場所とは限らず、目視で探し当てることはほぼ不可能です。 ■ 副女王がいるため単独駆除は無意味 仮に奇跡的に女王を駆除できたとしても、コロニー内部には副女王と呼ばれる繁殖能力を持つ個体が存在します。 女王が弱ったり死んだりすると、すぐにその役割を引き継ぎ、産卵を再開します。つまり、女王1匹を狙う対策では、群れを壊滅させることはできません。 ■ 工法選択が最重要 重要なのは「誰を狙うか」ではなく、「どうやって群れ全体を止めるか」です。 ・液剤処理・土壌バリアで侵入経路を断つのか ・ベイト工法で巣全体を弱体化させるのか 建物の構造や被害状況によって、適切な工法は異なります。 正しい調査に基づき、目的に合った工法を選択することこそが、被害を止める最短ルートです。 ■ 5年ごとの点検が再発防止の鍵 シロアリ対策は「一度やれば終わり」ではありません。 薬剤の効果は一般的に約5年で低下します。効果が薄れたタイミングで再侵入が起これば、再び被害が始まる可能性があります。 だからこそ、 ・定期点検 ・5年を目安とした再処理 ・湿気・床下環境の管理 といった長期的な視点が不可欠です。 女王を探すことに時間をかけるよりも、今ある被害を止め、将来の再発を防ぐ仕組みを整えること。それが、住まいを守る最も現実的で確実な方法です。 不安を感じた段階で、床下や構造部の点検を受け、建物の状態に合った対策を検討してみてはいかがでしょうか。 長野県でシロアリについてお困りの方は、テオリアランバーテックにお気軽にご相談ください。